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『夜と光』
 
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「息を、ゆっくり〜ふかく〜ふかく吸って〜じっと、
息を止めて〜〜ゆっくりと〜息を吐(は)いてゆく……」と、
どこかで、だれかが、
言っていたような、気がしました。
でもこの部屋の中で、目を覚まして、
起き上がっているヒトは、誰もいません。
「ゆっくりと、ふかく」〜〜深呼吸をしてみました。
一生懸命(いっしょうけんめい)に、呼吸をしていました……。
寒くて、震えていた自分が、暖かくなり、
いつの間にか、恐怖心も消え、
何か大きくて、やわらかな羽毛のようなもので、
包まれているような……そうして、
<幸せ>な気持ちに、成っていました。

雨戸(あまど)の外が、すこし明るくなってきました。
重ね合わせた、雨戸の板と板のすき間から、
早朝の弱い光が、入り始めています。
ふかい呼吸で、安心が起きたのか、
トイレに行くことも忘れて、そのまま寝てしまいました。
〜〜突然!「学校に、遅刻しますよ」
遠くで、せわしく働いていた、母親の声がしている。
朝はいつも、ニガテでした。
頭も身体も重く、ぐずぐずしていて、
なかなか、起き上がることができません。

今朝は、とくべつに違っていました。
朝の良いにおい! みそ汁・ごはん・たまご・納豆のにおい、
新鮮でした〜〜身体もこころも元気‐上々。
「何が起きたのだろう〜夜中に、
夢だったのだろうか……あれは」
その不思議な体験は、だれにも話されることなく、
少年のこころの疑問帳に、「なぜ?」が、
ひとつ、加わることになりました。
20年後!〜〜30歳となって、同じような体験を通して、
ずっと、<疑問?>に思っていたことが、
解(と)き明かされることになりました……。

 

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