『白い館』 ——雪の下の劇場(シアター)

雨が、降っている、

いつもと、変わりない、

いつもより、力強く、

雨脚が延びている、かに。

 

窓を開けると、杉の木の針葉や、

楢樹(ナラ)の広葉に似た、枯れ葉や、

竹林から捥(も)ぎ取られた、竹の葉が、

強風に((あお)られて、

雨となって、降り注いでいる。

東北・奥羽(おうう)の〈弥生(やよい)の丘〉の、

夜陰(やかげ)に建つ、エンジ色の、

西洋瓦の白い館を、取り囲むように、

「ヒュー・ヒュー・ヒュー」と、

ヒトの心の奥に潜む〈不安!〉を、

掻き立てるかに、時々、

風の神(エオロス)音(おん)が、聞こえてくる。

 

ギリシャ神話の、エアロス神から、

雪の女神にバトンが渡され、

〈弥生の丘〉や、坂下の屋根〜屋根に、

ヒト知れず、真っ白い粉雪で、

書き初めの、水墨画アートしていた。

久遠に続くかの、厚い夜の帳(とばり)を、

新春の日の出が、厳かに開け放つと、

東日本の惨劇の太平洋(うみ)では、

朝陽のパテシエが、光り砂糖粉(パウダー)を、

キララ・キラ、キララ・キラキラ

無辺数(あまた)……振りまいているる。

 

これと言った理由(わけ)もなく、

息づまってしまった時、

呼吸を胸・肩でしていて、

空や遠くを見ることを、

忘れてしまっていた心に……

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