『開かずの館』No.2

物語りするように、そっと玄関の扉を開けて、

外に出ようと、足を踏み出したものの、

庭の風景がかい間、見えたのに、

身体は閉じた扉の、こちら側に、

戻って来てしまっている……近しい、訪問客も、

玄関に立ち扉を開けて、広間に入って行こうと、

一歩(いちほ)踏み出したものの、一瞬でもとの位置に、

戻ってしまい、家の中に入って行くことが叶わない。

どうしてか、玄関の出入り口がその役目を辞めてしまい、

建物に出入りできなくなってしまっている。

「いつ頃からだったのだろうか、それは?」

家全体がモヤ・カスミの糸で、厚く織り込まれ、

繭(まゆ)のように包み込まれて、閉じ籠こもってしまっていた……。