物語りするように、そっと玄関の扉を開けて、
外に出ようと、足を踏み出したものの、
庭の風景がかい間、見えたのに、
身体は閉じた扉の、こちら側に、
戻って来てしまっている……近しい、訪問客も、
玄関に立ち扉を開けて、広間に入って行こうと、
一歩(いちほ)踏み出したものの、一瞬でもとの位置に、
戻ってしまい、家の中に入って行くことが叶わない。
どうしてか、玄関の出入り口がその役目を辞めてしまい、
建物に出入りできなくなってしまっている。
「いつ頃からだったのだろうか、それは?」
家全体がモヤ・カスミの糸で、厚く織り込まれ、
繭(まゆ)のように包み込まれて、閉じ籠こもってしまっていた……。