『風はどこからきた』No.3

これ以上、無口となる心を傷つけない為に、

欲望が〈善〉をまとって迫って来た時、

沈黙か、「いいえ」の「ハイ」か、

選択肢は無きか……ひときわ、今年の短い秋に、

「風が落ちている!」雌雄‐別樹の、

生きている化石‐〈イチョウ樹〉の、

黄金色の鮮烈な絨毯(じゅうたん)の、落ち葉の上に。

 

 

 

 

 

『風はどこからきた』No.2

勢いよく切り捨ててしまったモノ、

誰にも告げずに来てしまったコトに、

無意識の井戸の底いに、何処までも、

その深さを測る、垂鉛(すいえん)の紐を、

垂れ下げて行くように、降りてゆく、

方途か術は無きか……身体の、傷ならば、

包帯を巻いて癒しを待てば、治癒するコトも、

複雑な心の傷には、どんな手当がいるる。

『風はどこからきた』No.1

今日の風は、どこから、

吹き継いできたのか、妙に、

いがらっぽく、逢魔(おうま)が時に、

胸と脳に、渇きひとしお。

 

キッパリと「ノウ!」と言ってしまったコト、その時、

起きていたコトに対してだけでなく、

そのコトに繋がる、忘失してしまった過去に、ふかい、

深い〈心の傷・トラウマ!〉が、繋がってはいないか。

いま! 起きている不都合なこと、

消し去ってしまいたい、避けて、

無しにしたかったコト、

否定しきってしまいたいコトども……

計り知れない過去の、どこかでそれは、

起きていたことと、リンクしていないか?

いつまでもそれは、どこまでも、無意識から浮上する、

不安・イライラを、運び続けているる。

〜今いまに! 『弓矢のように』No.2

✼     ✼

古代〈弓〉は枝を払い、弾性ある細丸木に、

刺草(いらくさ)・麻の繊維を縒(よ)って弦を張り、矢をつがえて射(い)るる。

ケヤキの槻弓(つきゆみ)、ヤマグワの拓弓(つみゆみ)、

古代ー神世(かみよ)には、ハゼの木の櫨弓(はじゆみ)‐〈天之波士弓(あめのはじゆみ)〉を手に、

弓矢の〈天之眞鹿兒矢(あめのまかこや)〉を手挟(てばさ)みし、

他に荒ぶる武器を持した、太陽神アマテラス-軍が、

日の本‐豊葦原(とよあしはら)に天孫降臨して、平和に政(まつりごと)する、

水々しく稲穂たわわに稔る瑞穂(みずほ)の、オオクニヌシ神の出雲国を、

制圧・支配した、捏造(ねつぞう)の<出雲神話>のあり。

かつて印刷の版木にも使っていた梓木(あずさぎ)は、丸木ごと、

弓なり成した〈梓弓(アズサユミ)〉で、キリリと真斗(まと)を絞り‐射る。

梓弓の弦を弾(はじい)ては鳴らし、トランス状態の梓巫女(あずさみこ)に、

霊‐降ろししていたは、遠の昔し話しか。

 

真弓(まゆみ)曳く 秋紺碧や 標的(まと)矢羽

咲き競う 百花繚乱(りょうらん) 真弓木の実