『マヤアステカの神話』<音楽の起源>
アイリーン・ニコルソン著/松田幸雄訳(引用)
風の近づいて来たのを見た太陽は
音楽士たちに告げた、
「忌まわしき地上の風が
やって来たぞ
音楽を続けろ!
歌うのをやめろ!
彼に答えるな!
なにびとたりとも口をきくものは
彼に従って口を閉ざし
地上に降りてゆくことになるぞ」。
太陽の家の
光の階段から
風はくぐもる声で叫んだ、
「音楽士たちよ、歌手たちよ!」
答えるものはない。
爪立ちした風は声高らかに叫ぶ、
「音楽士たちよ、歌手たちよ!
世界の至高の神が
おまえたちを呼んでいるのだ……!」
いま音楽士たちは沈黙を装い、
目眩めく太陽の炎のなかに
踊りの輪ははやまる。