『マヤアステカの神話』<音楽の起源>
アイリーン・ニコルソン著/松田幸雄訳(引用)
やがて神―天国の四方の神は
怒り心頭に発した。
最涯ての地から
稲妻の鞭に打たれ、
その黒い飴を稲妻に刺され引き裂かれた
雲の魂は
太陽の家を囲んで集まった。
その底無しの喉からは雪の怒号が響き、
世界の狂った屋根のもとで
すべては輪を描いてひれ伏すかのように見えた、
その胸に赤い獣のような太陽は沈んだ。
恐怖に駆られ
音楽士たち歌手たちは隠れ場を求め
風の膝元へと走った。
やさしい調べを損なってはならぬと
風は彼らを静かに運びつつ
膨れる歓びを腕に抱き、
心豊かに満ち足りて
下界への旅に旅立った。
下には大地が広く暗い眼差しで天国を見上げていたが
やがて大きな顔は輝き、微笑んだ。
木々がその枝々をもち上げるにつれ
風の旅人は歓び迎えられた、
地上の人びとの歓呼の声、
ケツァルの鳥たちの翼、
花々の顔と果実の類。