改訂‐『洞爺湖‐新説話 風の栖(すみか)』No.2

 

洞爺湖有珠(ウス)山ジオパークの、腐食しない看板が、

四季折々の北の国の、湖の風景に染まらずに、

真っ直ぐに立つ、ことだけを生業(なりわい)にしていた。

近間の緑の公園には、人間の巨大な顔の彫刻が、

重力に抗して、緑地に斜めに植え込まれている。

有珠山山頂に登ると、正面に洞爺湖の中島(なかのしま)が、

右方には昭和新山の噴火時のままの、禿山(はげやま)が見える。

ウスとシンザンの活火山が、穏やかに火の胎児を育てていた。

冷却し始めた秋風が、澄んだ藍緑の湖を渡り、

中島の蝦夷(エゾ)松の樹林に、吹き込んで行く。

緩やかな山道は、樹木伐採のチップスと、

エゾ松の枯葉が重なり、ふかふか絨毯している。

その下の底の底いに、何ごとか隠し事しているかに、

踏みしめて歩く足元がおぼつかない。