中嶋 稔 詩文
恐怖はないか、断崖から落ちてゆく滝水たち、
ためらいはないか、三十七メートル余の絶壁より落下して、
シルクのカーテンを縦に広げたように降るる瀑布よ、
浅い滝壺の一面に散在する小石群に当たり、
跳ね返って散り、あまた小さな氷ドームを作っている。
滝口を塞ぐかに岩が厳とあり、赤城・大沼の伏流が、
渓流となり、それが堰止められて、膨れ上がった水流が隆起し、
落ちて行く・・・・・錯覚か、
岩がグラグラ揺れることがある。
秋寒むまで滝壺を飛翔していたセキレイは、
何処ぞかに寝ぐらを変えてしまっていた。