『わたくしと影』No.3

枝葉ひと葉も残さずに〈自然〉を清掃した、

石造のスクエアーに、機械科学の粋すいを集めて、

超高層建築‐樹が林立し、都市の喧騒(けんそう)を飲み込むかに、

ビルの山陵が新たな、空っ風を生み容赦なく、

吹き降ろして来る……ひと知れず、襟を立てる。

建物には外に身を乗り出して観る、窓がない。

秘境を失って久しい奥山では、やがて巨大な石の壁に、

堰き止められる渓流が、岩〜岩を流れ打つ、

その烈しい音叉(おんさ)もすべて、皆〜みんな飲み込むかに、

シンシンと、記録的な雪が降り継いでいる。

身を投げる! 渓流沿いの露天風呂から、

身の丈に積もった、鳥の羽毛を重ねた雪布団に。