天高く晴れ上がった空の下、山肌が露出している熊野岳山頂には、
<全人/大師>と呼ばれたヒトが、すでに来て居られた。
朱塗りのトタン板葺の屋根の、小じんまりした神社があり、
手前には石の狛犬と獅子が、何を守ろうとしているのか、
神社を背に二柱、じっと鎮座している。
右側の石像の獅子は口を開いて、世界の始まりを表す「阿」と言い、
足で玉(球)を押さえている。&〜角が生え口を閉じて、
終わりを意味する「吽」と宣いっている狛犬が中空を睨んでいる。
「阿・吽の神の使い神獣」と言うより、どこから見ても
二対は奇怪な妖怪獣の姿……日の本の、何処の神社にも鎮座している不思議。
屋根はネットで覆われていて、柱や壁面は厳しい風雪に耐えてきたか、
水焼けして、素材の白く色抜けした跡が散見している。