散文詩『蔵王連峰の夢想よ氷雪を消さずあれ』No.3

天高く晴れ上がった空の下、山肌が露出している熊野岳山頂には、

全人まとうど/大師>と呼ばれたヒトが、すでに来て居られた。

朱塗りのトタン板葺いたぶきの屋根の、小じんまりした神社があり、

手前には石の狛犬こまいぬと獅子が、何を守ろうとしているのか、

神社を背に二柱ふたはしら、じっと鎮座している。

右側の石像の獅子は口を開いて、世界の始まりを表す「」と言い、

足で玉(球)を押さえている。そして〜角が生え口を閉じて、

終わりを意味する「うん」と宣いっている狛犬が中空を睨んでいる。

「阿・吽の神の使い神獣」と言うより、どこから見ても

二対は奇怪な妖怪獣の姿……日の本の、何処の神社にも鎮座している不思議。

屋根はネットで覆われていて、柱や壁面は厳しい風雪に耐えてきたか、

水焼けして、素材の白く色抜けした跡が散見している。