散文詩『蔵王連峰の夢想よ氷雪を消さずあれ』No.4

全人まとうど(/大師)の背筋はピント伸び、若々しくて張りのある声と、

一着だけのモスグリーンの背広姿に、老いは訪れては来ず、

十年ぶりの再会で、歳よわい七十五才は過ぎておられた。

神社から少しく離れた所にある岩に腰を降ろし、

昨日の話の続きであるかのよう、唐突にお話を始めた。

「既成宗教や物理科学も、誰人たれひとも妄想・錯覚と言うかもしれないが、

この地球に、“人間は神となる為に生まれて来た!”

それは自然生命が進化してゆく、生命エネルギーの原則の一つでもある」

その言葉に驚きはしなかった……以前、何処かで全人まとうどから、

聞いたことがある、との思いが過よぎっていた。

「生命・宇宙の最もはじめの創造段階で、

“人間は進化して……”」と言ったところで、突然、

全人まとうどを包むように、小さな竜巻が起こり、

後につづく言葉は消えて、それを言い直すでもなくお話を続けた。

〜つづく〜