降り注ぐ雨は山肌を縫う細流となり、
渓流をなし、束ねた水流が烈しく落ちてゆく、
深いふかい谷底に向かって、滝の飛沫が、
無心の舞い舞い放下(ほうげ)してる。
重いおもい肥満の心が削がれながら、
墜ちてゆく、落ちて行き、ゆるやかに降りてゆく、
黒闇の底無しに向かって。
気の遠くなる程、時が流浪した闇を穿(うが)ち、
やがて……何処からともなく、
ほのぼのと灯が湧いて来て、ほのめいているる。
やがて谷間(たにあい)の滝の音が、鮮やかに朝色に染まってく。
山頂への上昇志向ばかりでなく、時に降りて行く、
あれやこれ過去がいっぱい詰まった、闇の底いに向かって。