新訂詩『樹林 自然幻想』No.3

 

☆桜樹サクラは歩けなくとも、春雨の後の小川で、

淡いピンクの花筏の遊泳しているる。

 

眼を閉じる静かに、まぶたに気づかれぬよう、

耳を閉じる、内なる無音むいん‐楽音がくねを聴く、

鼻を閉じる、薫香においはイノチの主張〜無嗅覚きゅうかくする。

口舌くちを閉じる、無言・沈思〜魂ミタマの真言葉まことばが届く、

全身の触覚を閉じて、カラダの空っぽ‐空の働きを知る。

ケイツイの先き端に、被さるかに在る脳幹の、

〈五感〉機能から観る風景が、微妙に靄(もや)いてないか。

感感した〈自然〉は、精密な機械仕掛け、

縮小してゆくと、パターン形の組み合わせ、

フラクタルな幾何学構造しているる。

近頃の宇宙物理学が、「宇宙のすべての現象は、

たった一つの数式で表すことができる」と。

プラス・マイナス、陽・陰、善・悪の超ミクロ、

相対的なエネルギーの量子宇宙(せかい)、更に奥の奥の微小の、

物質の最小単位、素粒子エネルギー宇宙は、

一瞬に生まれて一瞬に消滅する、こだわりのない、

執着しない〈無!〉の世界かな……