『闇の底いに向かって』No.2

 

降り注ぐ雨は山肌を縫う細流となり、

渓流をなし、束ねた水流が烈しく落ちてゆく、

深いふかい谷底に向かって、滝の飛沫が、

無心の舞い舞い放下(ほうげ)してる。

重いおもい肥満の心が削がれながら、

墜ちてゆく、落ちて行き、ゆるやかに降りてゆく、

黒闇の底無しに向かって。

気の遠くなる程、時が流浪した闇を穿(うが)ち、

やがて……何処からともなく、

ほのぼのと灯が湧いて来て、ほのめいているる。

やがて谷間(たにあい)の滝の音が、鮮やかに朝色に染まってく。

山頂への上昇志向ばかりでなく、時に降りて行く、

あれやこれ過去がいっぱい詰まった、闇の底いに向かって。

『闇の底いに向かって』No.1

『闇の底いに向かって』  中嶋 稔

人生を山に例えて、

ひたすらに、頂上目指して登ることに、

倦(う)みあぐねた心よ……立ち止まり、

汗ばんだ頬を撫でてゆく、

山あいを渡る風の音を聴き、

ブナ、ナラ樹の葉ずれに耳を寄せる。

アマツバメ、イワヒバリ、頭部がオレンジ色のコマドリ、

ブルーな羽のルリビタキ達のヒソヒソ声や、

小ぶりの角のニホンカモシカや、ヤマネ、

可憐な貂(テ)ン顔に似て、岩をつかむ獰猛(どうもうな)手爪のオコジョの、

山岳を駆け抜けた息のするる。

上ばかり見ていた重いまなこを下に落とす、

微かに水の音が、谷のそこはかとない匂いが届いて来ないか。

新訂詩文『初音(はつね)ウグイス』No.4

「変異ウグイス? 新種ネオウグイス!」

「ホー ホケホケ」の子ウグイスを卒業して、

「ホーホケキョー」ではなく、ほこらかに威厳を持って、

「ホー ホケ ケキョー」

「ホー ホケ ケキョー」

「ホー ホケ ケキョー」

〈❊〉註=

新訂詩文『初音(はつね)ウグイス』No.3

「よーく観て、視てみてごらん!」

人間イノチの本体《魂(ミタマ)》は、卵のように本体を守るかに、

幾重にも殻を、異次元に繋がる表現体〈❊〉をまとってる。

私のワタシの、わたくし自身は……

いずこより来たりて、何処いずこへと向かう。

「だれも知ろうとしないの、ほんとのこと」

青く清楚だった地球が、グローバルに、

半透明なダーク・グレイに変色していないか。

異常気象‐温暖化、米国カリフォルニア州の、

デスバレー公園では、日中気温が約五十四度越えし、

真夜中は五十度余の熱帯夜となり、

もはや止めようもないのか地球の温暖化・砂漠化・・・・・・

変異・異変のパレードの開幕するるか。

第三次デジタル〈産業革命〉の、専制・独占化が進み、

機械科学‐幻想企業や、戦争兵器産業は、

この世の春を謳歌するかの、好景気かな。

新訂詩文『初音(はつね)ウグイス』No.2

昨年までの杉樹林での、

子ウグイスの発声練習は、ずっと、

「ホー ケキョ」

「ホー ケキョ」でした。

そして「ホー ホケキョ」に。

あと三日、梅雨が明けて今年もさらに、

異常な暑さの夏到来に、「ホー ホケホケ」が

ウグイス族のする「ホー ホケキョ」のさえずりの、

逸脱‐もどりから卒業できるかしらん。

「ホー ホケホケ」

「ホー ホケホケ」

年めぐり桜樹の新緑え立ち、梅雨惜しみ惜しむ、

天上〜天下、宇宙そらまでハレ上がってる。

素知らぬ振りで、長い列をなし暗雲〜流れ行き、

勢いたけるゲリラ雷雨に、今年から新たに参戦した、

線状降水帯の狂気の嵐、どなたが操縦しているる。

その息軒昂けんこうにして、地震に次ぐ被害は甚大、

世界の十大陸を集め縮小したかの、縮図〈❊〉日本列島で、

なに起きているる・・・・・・猛暑けした杉樹林で、

しばらくじっと、息を潜めていたかのウグイスが、

嵐の途切れ間に「ここに居るよっ」啼きはじめた。

「ホー ホケホケ」だったウグイスが成人して、

百年の杜に帰って来た、今いまに、なに起きているる。

新訂詩文『初音(はつね)ウグイス』No.1

初音はつねウグイス』 中嶋 稔

東北‐奥羽の、もりの都の郊外の、

縄文山の《百年の杜》で、

杉樹林の中、杉樹の天井を、

突き抜けた蝦夷エゾ松が、みやび雄壮、

天空を支えているかに、リンと立っていた。

異常気象の星月夜に、

突風が吹き荒れ、荒れに荒れて、

太い幹の中途から折れて、

百余年の年輪‐刻みをやめていた。

「ホー ホケホケ」

「ホー ホケホケ」

「ホー ホケホケ」

近まで、少しく小さな声で、

「ホー ホケキョ」

同じウグイスかと思ったら、

「ホー ホケホケ」

親ウグイスの声もするる。

「ホー ホケキョ」

詩文『光りと影のアラベスク』No4

 

目眩(めくるめくおもい、眼を堅く閉じても、

余りに激烈な、科学的光の閃光は、

まぶたの毛細血管のくれない色を、

容赦無く沸騰‐暴発させるかに!

第二次世界大戦の終焉を烙印した、

長崎の原爆の、爆心点の高度は、

地上から490㍍~+-25㍍で、

一点に摂氏‐数千万度の火球が発生し、

爆発から1万分の1秒! 超ミクロの瞬間に、直径約30㍍、

温度は摂氏30万度の火球となり、100分の1秒から

0.1秒の間に一気に、直径100㍍~280㍍に膨満ぼうまんした。

空中は痛みを伴った、数値を記憶している分けではない。

ヒトはその記憶を、コンピューターのオンとオフ、

0と1の組み合わせにして、保存・保管してしまった。

いま隣国を侵略して、自国領土とした超ワンマン権力者が、

「(略奪した)自国の土地を侵された時、核戦争となる!」

平然と〈偽悪〉を公言して憚はばからない、こころが傷まない、

権力者の影は、投下された地面にどんな姿影すがたを描くの……。

〘註〙〈❊〉

カラー・バス効果(Color bath色を浴びる)=ある一つの事や物を意識することで、それに関する情報が、無意識裡りに自分のエリアに集まってくる。「知覚の選択性」とも言う。

 

詩文『光りと影のアラベスク』No3

 

光と影のアラベスク、本当の光りは何処に行ってしまった。

北半球ではヒトの影は、ヒトの後ろにできる。

南半球では見たことはないが、

一本で森のような、大楠の木の影と同じよに、

太陽光はその後ろに影を作る。

北極や南極では、モノの影は……

北極では、ヒトの真下〜直下にできる?

南極での影は、詩的に跳躍(ジャンプ)して、

頭上の虚空に投影される……か?

詩文『光りと影のアラベスク』No2

 

光と影のアラベスク、本当の光りは何処に行ってしまった。

北半球ではヒトの影は、ヒトの後ろにできる。

南半球では見たことはないが、

一本で森のような、大楠の木の影と同じよに、

太陽光はその後ろに影を作る。

北極や南極では、モノの影は……

北極では、ヒトの真下〜直下にできる?

南極での影は、詩的に跳躍ジャンプして、

頭上の虚空に投影される……か?

詩文『光りと影のアラベスク』No1

 

中嶋 稔

自然(Natureネイチャー)も人類も、急激な変異の渦流に、

ヒト知れずに、飲み込まれているる。

酷暑の街々や夕涼みの縁台に、急に降る雨、

夏の季語‐夕立ゆだちは驟雨(しゅうう)・喜雨、突然の真っ白な、

瀑布のよな雨は白雨(はくう)とも……季語を喪失し、至るところ、

自然災害の爪痕を刻印し、神出・鬼没の大雨は、

ゲリラ雨〜ゲリラ雷雨、バージョンアップして、

線状降水帯〜「やまない雨はない」のに、

止むことない連鎖の豪雨の降るる、大厄・災害の日本列島、

酷暑に木陰も押し流され……海には、影たちの骸骸むくろが、

行くあてもなく、漂流しているらし。