詩文『竹と空と』 No.4

 

竹竹竹、竹竹の古路こみちを行く、

はるか久遠の過去から、吹き渡ってきた風とともに。

辛苦(しんく)・辛酸(しんさん)の惨劇に満ち満ちた、この生命‐世界を、

凝視して吹き継いで来た〈風の神〉イブキヒコ神・

イブキヒメ神たちの息吹イブく働きは、清浄きよめ・浄化そのもの、

無辺数あまたの竹の葉ずれが、それを吹奏(すいそう)しているる。

サワサワ・サワワ・サワサワ・サワワ、

サワサワサワ・サワワ・サワサワ、

サワワ・サワサワ・サワサワサワワ……

時に寂さび・侘わびびの竹花瓶となり、茶室に端座(たんざ)してる、

寒風と直射日光で、赤く染まる女竹(めだけ)は「幸運を運ぶ竹」とも。

竹の地下茎はひとつで、豊穣な竹林を造形する。

淡竹はちく・苦竹はおよそ百二十年、孟宗竹は六十年余周期で、

絹糸の先に米粒を付けたかの、稲の花に似た白い花が咲き、

観音竹の花はシンプルに、海に咲くサンゴ‐ピンクのよう。

竹林では小さな種子を結び、やがてその実は、

滋養豊かな地に落ちて、新た世代交代のイノチを渡す。

役割を終えた竹林は、ハレやかに枯れ野となるか。

百年を生きた竹の精霊は、つぎは何に生まれ変わる、

「しなやかに、たおやかに、のびやかに!」

〜つづく〜