詩文『樹林 幻想』 No.2

桜樹サクラは歩かなくとも、春雨の水溜りで、

淡いピンクの二人連れ、花びらが遊泳してる。

眼を閉じる静かに、まぶたに気づかれぬよう、

耳を閉じる、内なる楽音がくね無音むいんを聴く、

鼻を閉じる、薫香においはイノチの主張〜無嗅覚むきゅうかく

口舌くちを閉じる、無言・沈思〜ミタマこえが届く、

全身の触覚を閉じて、カラダの空っぽを知る。

ケイツイの細い先き端、被るかに在る、

脳幹の〈五感〉から観る風景が、微妙に霞んでいないか。

感感した〈自然〉が、精密な機械仕掛けのよう、

イノチの働きが、やいているように視える。

〈❊〉註=和室や建物のかべの柱と柱の間に水平方向に繋ぐ板部材で、東照宮ではそこに彫刻を施した。