ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。
一歩足を踏みはずせば、いっさいが若者をだめにしてしまうのだ。恋愛も思想も家族を失うことも、大人たちの仲間に入ることも。世の中でおのれがどんな役割を果しているのか知るのは辛いことだ。
ぼくらの世界は何に似ていただろうか。この世界は、ギリシャ人が、雲のかたちにでき上りつつあった宇宙の起源にあったとする混沌に似ていた。わずかにちがっていたのは、この混沌がおわりの、真のおわりの始まりであって、このおわりから何かがまた始まろうとする端緒ではないと思われたことだ。
世界がなお保っている力のありったけを汲みつくそうとするさまざまの変容を前にして、ごく少数の目撃者だけがこの神秘を解く鍵を見出そうと努力していた。しかしただ分ったのは、この混乱のためにいずれ現存するもののすべてが天寿をまっとうして死ぬだろうということだけだった。
いっさいは、もろもろの病いをしめくくるあの無秩序に似ていたのだ。つまり、肉体のすべてを結局は目に見えないものにしてしまう死が姿を現わすに先立って、いままでひとつのものだった肉がばらばらになり、数を増した肉体の各部分がそれぞれ自分勝手な方向に伸びだすのである。その結果ゆき着く先はかならず腐敗であり、もはやそこに復活ということはない。
新訂詩文『初音(はつね)ウグイス』No.4
「変異ウグイス? 新種ウグイス!」
「ホー ホケホケ」の子ウグイスを卒業して、
「ホーホケキョー」ではなく、ほこらかに威厳を持って、
「ホー ホケ ケキョー」
「ホー ホケ ケキョー」
「ホー ホケ ケキョー」
〈❊〉註=
新訂詩文『初音(はつね)ウグイス』No.3
「よーく観て、視てみてごらん!」
人間イノチの本体《魂(ミタマ)》は、卵のように本体を守るかに、
幾重にも殻を、異次元に繋がる表現体をまとってる。
私のワタシの、わたくし自身は……
いずこより来たりて、何処へと向かう。
「だれも知ろうとしないの、ほんとのこと」
青く清楚だった地球が、グローバルに、
半透明なダーク・グレイに変色していないか。
異常気象‐温暖化、米国カリフォルニア州の、
デスバレー公園では、日中気温が約五十四度越えし、
真夜中は五十度余の熱帯夜となり、
もはや止めようもないのか地球の温暖化・砂漠化・・・・・・
変異・異変のパレードの開幕するるか。
第三次デジタル〈産業革命〉の、専制・独占化が進み、
機械科学‐幻想企業や、戦争兵器産業は、
この世の春を謳歌するかの、好景気かな。
新訂詩文『初音(はつね)ウグイス』No.2
昨年までの杉樹林での、
子ウグイスの発声練習は、ずっと、
「ホー ケキョ」
「ホー ケキョ」でした。
そして「ホー ホケキョ」に。
あと三日、梅雨が明けて今年もさらに、
異常な暑さの夏到来に、「ホー ホケホケ」が
ウグイス族のする「ホー ホケキョ」のさえずりの、
逸脱‐悖から卒業できるかしらん。
「ホー ホケホケ」
「ホー ホケホケ」
年めぐり桜樹の新緑萌え立ち、梅雨惜しみ惜しむ、
天上〜天下、宇宙までハレ上がってる。
素知らぬ振りで、長い列をなし暗雲〜流れ行き、
勢い猛るゲリラ雷雨に、今年から新たに参戦した、
線状降水帯の狂気の嵐、どなたが操縦しているる。
その息軒昂にして、地震に次ぐ被害は甚大、
世界の十大陸を集め縮小したかの、縮図日本列島で、
なに起きているる・・・・・・猛暑灼けした杉樹林で、
しばらくじっと、息を潜めていたかのウグイスが、
嵐の途切れ間に「ここに居るよっ」啼きはじめた。
「ホー ホケホケ」だったウグイスが成人して、
百年の杜に帰って来た、今いまに、なに起きているる。
新訂詩文『初音(はつね)ウグイス』No.1
『初音ウグイス』 中嶋 稔
東北‐奥羽の、杜の都の郊外の、
縄文山の《百年の杜》で、
杉樹林の中、杉樹の天井を、
突き抜けた蝦夷松が、みやび雄壮、
天空を支えているかに、凜と立っていた。
異常気象の星月夜に、
突風が吹き荒れ、荒れに荒れて、
太い幹の中途から折れて、
百余年の年輪‐刻みをやめていた。
「ホー ホケホケ」
「ホー ホケホケ」
「ホー ホケホケ」
近まで、少しく小さな声で、
「ホー ホケキョ」
同じウグイスかと思ったら、
「ホー ホケホケ」
親ウグイスの声もするる。
「ホー ホケキョ」
詩文『光りと影のアラベスク』No4
目眩(めくるめくおもい、眼を堅く閉じても、
余りに激烈な、科学的光の閃光は、
まぶたの毛細血管のくれない色を、
容赦無く沸騰‐暴発させるかに!
第二次世界大戦の終焉を烙印した、
長崎の原爆の、爆心点の高度は、
地上から490㍍~+-25㍍で、
一点に摂氏‐数千万度の火球が発生し、
爆発から1万分の1秒! 超ミクロの瞬間に、直径約30㍍、
温度は摂氏30万度の火球となり、100分の1秒から
0.1秒の間に一気に、直径100㍍~280㍍に膨満ぼうまんした。
空中は痛みを伴った、数値を記憶している分けではない。
ヒトはその記憶を、コンピューターのオンとオフ、
0と1の組み合わせにして、保存・保管してしまった。
いま隣国を侵略して、自国領土とした超ワンマン権力者が、
「(略奪した)自国の土地を侵された時、核戦争となる!」
平然と〈偽悪〉を公言して憚はばからない、こころが傷まない、
権力者の影は、投下された地面にどんな姿影すがたを描くの……。
〘註〙〈❊〉
カラー・バス効果(Color bath/色を浴びる)=ある一つの事や物を意識することで、それに関する情報が、無意識裡りに自分のエリアに集まってくる。「知覚の選択性」とも言う。
詩文『光りと影のアラベスク』No3
光と影のアラベスク、本当の光りは何処に行ってしまった。
北半球ではヒトの影は、ヒトの後ろにできる。
南半球では見たことはないが、
一本で森のような、大楠の木の影と同じよに、
太陽光はその後ろに影を作る。
北極や南極では、モノの影は……
北極では、ヒトの真下〜直下にできる?
南極での影は、詩的に跳躍(ジャンプ)して、
頭上の虚空に投影される……か?
詩文『光りと影のアラベスク』No2
光と影のアラベスク、本当の光りは何処に行ってしまった。
北半球ではヒトの影は、ヒトの後ろにできる。
南半球では見たことはないが、
一本で森のような、大楠の木の影と同じよに、
太陽光はその後ろに影を作る。
北極や南極では、モノの影は……
北極では、ヒトの真下〜直下にできる?
南極での影は、詩的に跳躍ジャンプして、
頭上の虚空に投影される……か?
詩文『光りと影のアラベスク』No1
中嶋 稔
自然(Natureネイチャー)も人類も、急激な変異の渦流に、
ヒト知れずに、飲み込まれているる。
酷暑の街々や夕涼みの縁台に、急に降る雨、
夏の季語‐夕立ゆだちは驟雨(しゅうう)・喜雨、突然の真っ白な、
瀑布のよな雨は白雨(はくう)とも……季語を喪失し、至るところ、
自然災害の爪痕を刻印し、神出・鬼没の大雨は、
ゲリラ雨〜ゲリラ雷雨、バージョンアップして、
線状降水帯〜「やまない雨はない」のに、
止むことない連鎖の豪雨の降るる、大厄・災害の日本列島、
酷暑に木陰も押し流され……海には、影たちの骸骸むくろが、
行くあてもなく、漂流しているらし。
『初音(はつね)ウグイス』No.4
「SF映画などでありません、これは」
地球の悲劇・惨劇と同時進行して、
今いまに、異次元世界でも起きていること。
「よーく観て、視てみてごらん!」
幾重にも殻をかぶった、私のワタシのわたし自身、
人間イノチの本体《魂(ミタマ)》のありよう、
「だれも知ろうとしないの、ほんとのこと」
青く清楚だった地球が、グローバルに、
半透明なダーク・グレイに変色していないか。
異常気候‐温暖化、異常気象……変異のオンパレード、
戦争・科学産業は、この世の春と謳歌し‐好景気かな。
「変異ウグイスなの? 新種ネオウグイス!」
「ホー ホケホケ」を卒業して、
「ホーホケキョ」でなく、ほこらかに、
「ホー ホケ ケキョー」
「ホー ホケ ケキョー」
〈❊〉註=後送